罪の時効と要件

告訴・告発とは、告訴状・委任状のサンプル

  1. 告訴・告発、被害届などとの違い
  2. 告訴状・委任状サンプル、書式
  3. 告訴・告発の方法

告訴・告発、被害届との違い

告訴とは

犯罪の被害者やその他の告訴権者が、捜査機関(検察官又は司法警察員に対して、犯罪が行われた(行われている)事実を申告し、その犯人の処罰(刑事訴追)を求める意思表示のことです。

告発とは

告訴権者・犯人以外の第三者が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、その犯人の処罰を求める意思表示のことです。

原則、 すべての人に告発の権利があり、誰でも犯罪があると考えるときは告発をすることができます。 例外として、 親告罪はその犯罪の告訴権者のみが告訴することができ、その他の者は、告発することはできません。 また、各法律で告発権者が指定されている場合がありますので、その場合も指定された告発権者のみしか告発することができません

告訴と告発を区別する理由は、親告罪において「告訴」の有無が公訴提起の要件となっており、訴訟手続きをする条件になっているためです。有効な告訴がなされたかどうかが、非常に重要になります。

==>親告罪とは。親告罪一覧と告訴権者一覧

被害届などとの違い

告訴・告発と、被害届の決定的な違いは、捜査機関が捜査しなければならないかどうか、にあります。

告訴や告発は、受理したら捜査機関は必ず捜査しなければならないのです。

被害届などは、被害事実の申告はありますが、犯人処罰の意思表示を含まないものとされ、告訴・告発と区別されます。被害届では捜査機関が捜査をしなければならない義務は発生しません

ただし、「被害届」としても、その内容に犯人処罰の意思表示がある場合は、告訴・告発として認められることになります。

告訴状、委任状のサンプル・書式

告訴状サンプル・書式

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告訴状

平成22年10月20日

茅ヶ崎警察署長 殿

告訴人 山田 太郎 印

告訴人

  住居  茅ヶ崎市南湖○-○-○
  職業  八百屋店主
  氏名  山田 太郎
   昭和○年○月○日生
   電話  0467-○○-○○○○
   FAX  0467-○○-○○○○

被告訴人

   住居  茅ヶ崎市若松町○-○
   職業  電気工事士
   氏名  川上 二郎

 第1  告訴の趣旨

 被告人の下記所為は、刑法第204条(傷害罪)に該当すると考えるので、被告訴人の厳重な処罰を求めるため告訴します。

 第2  告訴事実

 被告訴人は    年  月  日 午後  時  分頃、茅ヶ崎市十間坂○-○付近の路上において、告訴人に対し、交通の邪魔だなどと因縁をつけ、こぶしで顔面2回とみぞおちに1回殴打し、その結果告訴人に対し加療約2週間を要する傷害を負わせたものである。

  第3  立証方法

  医師丸山花子作成の診断書

  第4  添付資料

 前記診断書   1通

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告訴状・告発状の記載事項・書き方

告訴状・告発状の法定された書式や様式はありませんが、その目的を果たすために必要な記載事項があります。通常は、A4サイズ横書き、告訴状作成年月日は和暦で記載します。告訴状の提出先は、検察・警察どちらでも選択できます。どちらに提出するのがよいか、また、どの地域で提出するかは、後述しています

告訴人(告発人)

 正式な告訴権者であるかどうか判断しますので、告訴人の住所・氏名・職業・連絡先(電話番号)などを記載します。 署名・押印が必要(記名はNG)
 会社が告訴人になる場合は、会社名の下に代表者の肩書と氏名を署名し、会社代表者印を押印します。

被告訴人(被告発人)

 被告訴人(被告発人)とは、犯人のことです。犯人の氏名・住所がわからない場合や、事件の真犯人でなかった場合でも告訴状自体の有効性はかわりません。 
  実務的には、わかる範囲内で、氏名・住所(住居)・本籍・生年月日・職業などを記載します。 (これによって、犯人が実在するか、前科はないかなど照合することができます。) 犯人(被告訴人)の氏名などが特定できない場合は、「不詳」と記載し、人物の外観的特徴を記載します。例えば、推定年齢、身長、体格、人相、髪型、声、臭いなど、特徴的な事柄を記載します。(はっきりとしている点、あいまいな点を区別して下さい。) 

犯罪事実

 どのような犯罪が行われたのか、事実を記載します。

 犯罪が行われた日時・場所・罪名などもわかれば記載しますが、必ずしも書かれていなければならない、ということではありません。また、被害者が考えた罪名を書いたとしても、検察や裁判官はこれに拘束されません。 しかし、実務的には、捜査官に事実を的確に伝えるためにも、犯罪の日時・場所・犯罪がどのように起きたか(動機、きっかけ)、被害後の事情・情状をできるだけ詳しく正確に記載することが望まれます。
もちろん、罪名も該当すると思われるものを予備的に主張しておきましょう。

犯人処罰の意思

 犯人の処罰を求める意思表示が必要です。 これの有無によって、書面タイトルがどうであれ、被害届と告訴状の区別がなされます。

その他

 立証方法、証拠関係(人的、物的証拠)、添付資料(写真など)、告訴・告発に至った経緯 などを記載したり添付したりします。

言葉の注意点「当時」と「当」、「真実」と「事実」、「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」

「当時○歳」と「当○歳」の違い

当時○歳は、告訴状や告発状に記載されている事柄が生起した当時に○歳だった、ということを示します。 そして、当○歳は、告訴状や告発状を提出しようとしている現時点で○歳であるということ示します。

「真実」と「事実」の違い

「真実」は、客観的に実際にあったできごと。本当の事です。そして、「事実」とは、当事者が本当の事(真実)と信じている事。実際には真実ではない場合であっても、「事実」といいます。

「及び」と「並びに」の違い

「及び」「並びに」は、2つ以上のものを並列してならべる接続詞です。 使い方としては  「A、B、C、D及びE」などと、 「及び」を最後に使用しA~Eを並列関係で接続します。
また、「並びに」は、並列接続が2段階になるときに使います。 「A及びB 並びに C及びD」 及びは小さい並列、並びには大きい並列です。 数式では(A+B)+(C+D)というかんじです。

「又は」と「若しくは」の違い

「又は」「若しくは」は、2つ以上のものを選択的に連結する接続詞です 。 使い方としては  「A、B、C、D又はE」 などと、「又は」を最後に使用しA~Eを接続します。 「若しくは」は、選択が2段階になるときに使います。 「A若しくはB 又は C」 又はは大きい選択、若しくはは小さい選択です。 (AorB) or C というかんじです。

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告訴代理権授与の委任状サンプル

親告罪などの告訴は「告訴権者」という「告訴ができる人」が特定されている場合があります。その場合において、告訴手続きを自分で行わず、第三者に委任する場合は、委任状を添付します。

委任状の日付を、告訴状の日付より後にしないよう注意してください。また、代理人が専門家の場合は肩書きを記載しましょう。弁護士や行政書士などの専門家でなくても、代理人になることは可能です。

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委任状

平成22年10月20日

茅ヶ崎市南湖○-○-○

告訴人 山田 太郎 印

私は、茅ヶ崎市新栄町○-○-○   弁護士 △△  △ を、代理人と定め、次の権限を委任する。

1.茅ヶ崎市若松町○-○居住の川上二郎に対する傷害事件の告訴に関する一切の件

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告訴・告発の方法

告訴・告発の方式

 告訴・告発は書面又は口頭とされています。どちらで行うかは、自由です。(例外として、独占禁止法96条)
 法律上はどちらでもいいことになっていますが、込み入った内容の事案の場合は書面で提出することを求められます。

タイトルは「告訴状」「告発状」「告発書」などとします。 書類の内容が不明確であったり、本人の意思にそぐわない場合などは、補充書の提出がもとめられます。

告訴状が受理されたら、調書が作成され、関係書類や証拠物が検察官に送付されます。 起訴・不起訴などの結果は、告訴権者・告発権者に検察官から通知されます。不起訴の場合は、その理由を請求し、不起訴処分の理由を知ることができます。

告訴状(告発状)提出機関の選択~検察か警察か?

告訴・告発を検察・警察のどちらにするか?

 告訴・告発は「検察官又は司法検察員」にするとされていますが、

になります。 ですから、検察事務官が受理した告訴状や作成した供述調書は、適法な告訴の受理とはなりません。同様に巡査や巡査長にも、告訴状の受理権限はありません

検察と警察のどちらに告訴・告発するかという点では、基本的には、どちらでもよく、通常は司法警察員に対して行うことでよいのですが、以下のような基準もあるので参考にして下さい。

検察官に告訴・告発しなければならない事案

独占禁止法違反、関税法違反など、各法律で告発先が検察官に特定されているような事件は、検察官に対して行います。

検察官に告訴・告発した方がいいとされている事案

大型・複雑な事件は検察官の方が良いと言われています

司法警察員(警察)に告訴・告発した方がいいとされている事案

など、警察捜査が必要な事件は、司法警察員(警察)に告訴・告発したほうが良いとされています。

どこの場所(地域)で告訴・告発するか

全国どこの検察庁の検察官でも、どこの警察署の司法警察員でもかまいません。 しかし、検察や警察の方で「効率的・合理的な捜査・処理」をしなければならないため、捜査・処理に適した土地の捜査機関に事件を移送することになります。

ですから、時間的ロス(移送時間)をなくすためにも、犯罪地(犯罪が行われた場所)または被疑者現在地(犯人が今いる場所) のうち、どちらかにした方がいいです。 また、被害者やその関係者から詳細な取調べを先にした方が良い事件の場合は、被害者の居住地の検察や警察に告訴すると良いです。

告訴状・告発状を受理しない理由

被害にあったことを申告するだけの被害届とは異なり、犯人処罰を求める告訴状や告発状は受理してもらえないことが多々あります。 告訴状・告発状は、受理したら必ず捜査しなければならないため、犯罪事件として形が整っているかなど、受理自体が厳しくなっています。最低でも以下の4点はクリアして告訴状を提出しに行きましょう。

民事事件との関係をクリアにしておく

 債権回収や慰謝料請求など、民事トラブルの解決、交渉ネタのひとつとして、刑事告訴を利用しようという場合には、告訴状を受理してもらえない可能性が高くなります。 「民事不介入」という言葉があるように民事事件に絡んだ刑事事件はその内容によって警察は動いてくれないことが多いのです。 しかし、実際に民事絡みの事案でも、受理し、事実関係の洗い出しなど捜査を行ってくれる警察官も多数います。 本当に相手を処罰してほしい、という目的で、告訴・告発することが大切です。

告訴状・告発状の預り(保留)

告訴・告発状を受理しない理由がない場合に、時として「預かっておきます」と言われ、正式な受理を拒まれる場合があります。受理と預り(保留)では全く異なりますから、正式な受理を求めるようにしましょう。 その場合に必要であれば、補充書を提出するなどして、捜査してもらえるようにしましょう。

外国人が母国語(外国語)で告訴・告発したい場合

外国語で作成された告訴状・告発状は有効です。外国人が外国語を使って作成した告訴状や告発状も有効です。(判例あり)

ただ、日本語の翻訳文を添付した方が、意思が早く的確に伝わります。告訴状・告発状は外国語を使用してもかまわないことになっていますが、起訴後、裁判が行われるときに、裁判所では日本語を使用します。裁判が日本語で行われることは裁判所法で規定されていることです。

しかし、外国人が裁判所で話をする場合、通訳をつけることができますから、安心して下さい。

一般人にはあまり関係ないことですが・・・・
 外国の君主又は大統領の名誉に対する罪について、外国の代表者が行う告訴又はその取消しは、法241(243)(書面又は口頭によって、検察官又は司法警察に対してする)の方式によることもできる他に、外務大臣に対してすることもできます。

 同様に、外国使節に対する名誉毀損罪・侮辱罪について外国使節が行う告訴又は告訴の取消しについても、同様に、法241(243)の方式のほかに、外務大臣に対してすることができます。


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