法人税法上の所得とは?
企業会計上の利益と法人税法上の所得
各事業年度の所得
各事業年度の所得に対する法人税の課税標準である、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とし、事業年度ごとに区分して計算することとされています。これを『事業年度単位課税』といいます。
法人税法上の所得金額と企業会計上の利益は、必ずしも一致しません。それは、前者が担税力に応じた課税公平の実現の為のものであるのに対して、後者は企業の財政状態及び経営成績の把握の為のものであるからです。
企業会計上の利益=収益-費用
法人税法上の所得=益金-損金
益金と損金
益金について
- 収益の額
収益≠益金 ここで、注意しなければならないのは、以下の3点です。
・ 益金自体の本質は規定せずに、算入すべき金額を規定していること
・ 法人税法独自の益金の額の計算に関する原理や原則はなく、その計算は、企業会計における収益の額の計算に依存していること
・ その事業年度に帰属する収益の額が計算対象となること - 別段の定めのあるものを除く
企業会計における収益の額と異なる益金の額については、別に法人税法等に規定されています。 - 資本等取引以外の取引に係るもの 益金の額に参入すべき収益の額は、損益取引にかかるものであることが要求されます。
- 取引の例
・ 資産の販売‥‥商品又は製品の売上高など
・ 有償による資産の譲渡又は役務の提供‥‥
固定資産の譲渡における譲渡対価、土地の賃貸における収入など
・ 無償による資産の譲渡又は役務の提供‥‥
資産の贈与における時価、無利息貸付における通常の利息など
・ 無償による資産の譲受け‥‥受贈益(時価)
損金
- 原価・費用・損失の額
原価・費用・損失≠損金
ここで、注意しなければならないのは、以下の3点です。
・ 損金自体の本質は規定せずに、算入すべき金額を規定していること
・ 法人税法独自の損金の額の計算に関する原理や原則はなく、その計算は、企業会計における「原価・費用・損失」の額の計算に依存していること
・ その事業年度に帰属する原価・費用・損失の額が計算対象となること
原価の額‥‥収益との個別対応により認識
費用の額‥‥期間対応により認識
損失の額‥‥発生の事実により認識 - 別段の定めのあるものを除く
企業会計における原価・費用・損失の額と異なる損金の額については、別に法人税法等に規定されています。 - 資本等取引以外の取引に係るもの
損金の額に参入すべき損失の額は、損益取引にかかるものであることが要求されます。 - 債務確定基準
費用の額のうち償却費以外の費用については、期末までに債務の確定しているものに限って損金の額に参入されます。
企業会計では、収益と費用との対応関係を重視して費用の見積計上(引当金の計上)を行っています。しかし、法人税法では、課税公平の見地から恣意性を排除するために、原則として費用の見積計上(引当金の計上)は認められていません。 ただし、法人税法上引当金については、企業会計との調整を図るために、別段の定めにより次の2つの引当金に限ってその計上を認めています。
- 貸倒引当金
- 返品調整引当金
所得金額の計算にあたって、収益の額及び原価・費用・損失の額の計算については、会計における概念や原理を前提として、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されることとしています
資本等取引は所得計算に影響を与えない
- 資本金等の額の増減取引
- 利益又は剰余金の分配
資本金等の額とは、法人が株主等から出資を受けた金額として、一定の金額(資本金や株式払込剰余金など)をいいます。
資本金取引に係る純資産の増減は、所得計算に一切影響を与えることはありません。
法人の所得に課税する法人税では、株主等からの拠出資本(元本)には一切課税しないので、資本金等の額の増減取引は所得計算から除外されます。
利益または剰余金の分配は、法人税課税後の所得の分配であり、再び所得計算に関係させないように資本等取引に含めています。