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継続雇用制度導入の注意点

  1. 継続雇用制度の対象者基準
  2. 継続雇用後の条件
  3. 系列会社への転籍
  4. 労働条件の不利益変更

継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度があり、それぞれの制度によってメリット・デメリットがあります。このページでは、継続雇用制度全般の基本的な決まり事を解説します。

1.継続雇用制度の対象者基準

対象者の基準については、労使が協議をして、労使協定を締結することが原則です。したがって、内容については労使間で決められるとされていますが、労使間で協議の上定められたものであっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除しようとするなど高年齢者雇用安定法改正の趣旨や、他の労働関連の法規に反したり公序良俗に反したりするものは認められません。

また、基準制定においては、具体性と客観性という二つの要件を出来るだけ満たさなければなりません。この二つの要件をもとに厚生労働省が作成したものがありますので、参考にしてください。

「働く意思・意欲」に関する基準例

「勤務態度」に関する基準例

「健康」に関する基準例

「能力・経験」に関する基準例

「技能伝承その他」に関する基準例

適切ではないと考えられる基準例

職種ごとに異なる基準を設けてもよいか?

職種や管理職であるか否かによって異なる基準を定めることは、労使間で十分に話し合い、労使納得の上で策定されたものであれば、改正高年齢者雇用安定法違反とはならないとされています。例えば、教育職員に限って対象者の基準とすることも違反ではありません。

当該対象者は必ず再雇用しなければならないのか?

高年齢者雇用安定法は、事業主に継続雇用制度等の制度導入を義務付けているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありませんが、対象者であって、再雇用を希望する者は原則として全員にその機会を与えなければなりません

しかし、再雇用制度の適用対象者をどのような労働条件で再雇用するかについては、事業主と対象者が、法令に違反しない限り自由に定めることができ、事業主と対象者との間で合意が成立しない場合は再雇用契約を締結しなくてもよいということから、対象者を必ずしも再雇用しなければならないということにはなりません

2.継続雇用後の条件

職種・雇用形態の変更

それまで教育職であった者を事務職に変更することをしたり、専任教諭から非常勤講師にしたりといった変更も可能です。それに伴い、労働時間や賃金などの労働条件も変更になります。週における勤務日数を少なくしたり、1日の労働時間を短縮したりすることも出来ます。これは、「高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではない」とする規定に基づいています

職域のみなおし

ジョブシェアリングとタイムシェアリングの利用を考えましょう

ジョブシェアリングは、職業能力の高低により専門職か単純作業かで分けます。
タイムシェアリングに関しては、高年齢者の希望する「労働時間」を考慮してパートタイム、フルタイムで分ける事ができます。

したがって、下図のように【専門性の高い・低い】【フルタイム・パートタイム】を組み合わせた、四パターンの配分ができます。これで比較的、職域とニーズのマッチングが容易にできるようになるのではないでしょうか

専門性の高い
フルタイム
専門性の低い
フルタイム
専門性の高い
パートタイム
専門性の低い
パートタイム

賃金

賃金を定める際は、最低賃金を下回らない雇用条件を定めなければなりません。学校法人の場合、産業別最低賃金の規定はありませんので、各都道府県で定められている最低賃金を下回らないようにすればいいということになります。
ところで、定年到達時以降については、職務・能力・会社に対する貢献などの要素を重視する制度に切り替えることが求められると思います。

当然のことながら定年前の賃金と定年後の賃金は、その継続性を切り離して考えるのが一般的だと考えます。

例えば、年功的賃金制度である場合には、定年到達時以降については、【職務、能力、会社に対する貢献などの要素を重視する】制度に見直すことが求められると思います。

その具体的な賃金の決定方法については、

  1. 一律に賃金を六割とか七割に下げる場合
  2. 継続雇用される従業員の業務内容や勤務地などの市場賃金を踏まえる場合
  3. 職務給を利用する場合

について考えると良いでしょう。以下に、それぞれについてまとめてみました。

1.一律に賃下げする場合

対象者全員の賃金を減額するため、モチベーションの維持・向上が困難になる可能性があるために、就いている業務の価値や成果を賞与に反映するなどの対策が必要になると思います。

2.業務・勤務地など市場賃金を踏まえる場合

業務内容や勤務地の市場賃金などで一人ひとりの賃金を決定するので、比較的モチベーションの維持が容易だと考えられます。この場合に市場賃金などは、例えば派遣労働者の賃金から一定率を引き下げた金額などを基準にすると良いかと思います。なぜ一定率を引き下げるかという理由は、派遣社員の賃金は派遣会社の手数料などが反映されるため、その分を減額するといった考えからです。

3.職務給を利用する場合

学校にとって付加価値の高い仕事を担当する者には高い賃金を、そうでない者や短時間労働者には低い賃金を設定し、高年齢者の雇用にニーズに照らしながら賃金額を決定することが可能になります。

雇用契約期間

厚生労働省によると、「65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと、65歳までは原則として契約が更新されること(ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます)が必要であると考えられますが、個別の事例に応じて具体的に判断されることになります」としています。したがって、それらが守られていれば、1年という契約期間の労働契約でも可能ということになります。

再雇用後の年次有給休暇

年次有給休暇の付与日数は、定年後引き続き再雇用される場合、勤続年数は通常、再雇用前の継続勤続年数と通算して計算します。また、定年退職時に年次有給休暇を全て消化していない場合、その残日数は、再雇用後にも繰り越さなければなりません。再雇用によって労働条件が変わり、1週間の所定労働時間や所定労働日数が減少した場合でも、残っている年次有給休暇は付与しなければなりません。

3.系列会社への転籍

定年後、学校法人が持っている別の法人に転籍させ、65歳までの雇用を確保するという方法もあります。子会社やグループ会社で労働契約を結べば高年齢者雇用確保措置を講じたものとみなされます。

グループ企業であればどんな場合にでも転籍が認められるのでしょうか?

厚生労働省によると、「別の企業であっても、両者一体として一つの企業と考えられる場合」としています。両者一体とは、その学校法人が子会社に対して明確な支配力を有し、親子会社間で採用、配置転換等の人事管理を行っていること、学校法人や子会社において、定年退職者の転籍を行うような労使慣行があることが必要です。

4.労働条件の不利益変更

高年齢者雇用確保措置により、定年者を再雇用する場合には、労働条件がそれまでよりも労働者に不利に変更となる場合があります。本来、労働条件は労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものですから、使用者が労働者にとって不利益変更となる労働条件を一方的に課すことは出来ません。

しかし、高年齢者雇用安定法の改正による定年後の再雇用は初めてのことであり、労働条件については比較する制度がないのですから、再雇用後の賃金が定年前に比べて低くなるという場合であっても、即座に不利益変更である、ということにはならないでしょう。

再雇用後に定年前と同じ勤務時間で同じ責任を負わせるようなことであれば、賃金の大幅減額は問題になりますが、再雇用後に、役職、業務内容、責任度合、勤務時間、勤務体系などを変更し、それに応じた賃金設定にすることであれば問題はないでしょう。

労働条件の合意ができなく、労働者が拒否した場合は再雇用しなくてもよいか?

労働契約は使用者と労働者の間の合意で締結されますが、厚生労働省によると、「改正高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で、労働条件などについての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、改正高年齢者雇用安定法違反となるものではありません」としています。

かしながら、これは高年齢者雇用安定法違反になるかどうかという観点のみですので、それ以外で問題が起こる恐れがありますので注意が必要です


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